野菜果物辞典

アオギリ科

熱帯アメリカ原産でラグビーボールに似た形状をしている。長さ15〜20cm、果実径は10cm程度、内部は5室に別れ、卵形で直径2cm程度の種子は1果実中に20〜50個含まれている。
成熟した果実から種子を取り出し、清潔な場所で堆積し数日間発酵させ乾燥させたものをカカオ豆といい、焙煎後に擦り潰して粉末にしたものがカカオペーストである。
カカオペーストに砂糖、ミルク、香料などを加え圧し固めるとみんな大好きチョコレートになる。
カカオペーストを圧搾してカカオ脂(カカオバター:医薬品、化粧品に利用)を除くとココアとなる。

カカオの主要生産国は、アフリカ西部、南アメリカ、東南アジアの赤道付近である。これはカカオの栽培適地の気候が、年平均気温27℃以上、年間降雨量2,000mm以上、有機質に富んだ適湿土壌で排水良好であること、と限定された環境であることが大きい。また強光線を嫌う性質もあるので幼木のうちは他樹と混植し日陰で栽培する等の工夫が必要とされる。

カカオの学名の属名 Theobroma はギリシア語で「神」と「食物」の2語からなる合成語で、カカオが如何に貴重な作物であったかを物語っている。

カカオの神々しい学名は、カカオ利用の歴史と関係している。カカオの栽培は約4,000年前には熱帯アメリカ(インカ、マヤ、アステカ文明など)で行われたといわれている。
スペイン人のコルテスが遠征したアステカ帝国(現在のメキシコ)では、磨砕したカカオ豆ペーストにトウモロコシ粉、バニラ、香料を加えた「チョコラトル(”苦い水”の意)」が強壮剤として王族、貴族を中心に消費されていたと云う。
 コルテスはアステカからスペイン王室にチョコラトルを伝え(1528年)、スペイン王室では約1世紀間チョコラトルを王室極秘飲料とした。その後、17世紀にはヨーロッパ諸国に広まり強壮長寿をもたらす医薬品として研究された。17〜18世紀のチョコラトルは医薬品として扱われた。当初チョコラトルは、”Chocolatl”と記されたが、スペインでの印刷ミスより”Chocolate”になったとの逸話がある。

19世紀になると、1828年にヴァン・ホーテン(オランダ)がココアを開発、その後ココア製造の搾油課程で生じるココアバターより固形チョコレート誕生の引き金となり、1875年にはダニエル・ピーター(スイス)によりミルクチョコレートが創出された。
 日本人で初めてチョコレート飲料を味わったのは、伊達政宗家臣の支倉常長が1614年メキシコ航海中とされる。日本発チョコレート製造は、1878年(明治11年)に米津風月堂とされ、カカオ豆から一貫したチョコレート生産が行われたのが大正初期の森永製菓・明治製菓によるものとされる。


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